2024年7月26日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて「Celonis Day Tokyo 2024」が開催されました。このイベントは、プロセスマイニングのマーケットリーダーであるCelonisが、プロセスマイニングの最新動向を日本企業に対してご紹介するものです。本稿では、各セッションのエッセンスを紹介します。なお、イベント当日の各講演については、こちらからご覧いただけます。
イベントレポート第四弾では、Celonisのパートナーによるセッション内容についてご紹介します。
まずはアクセンチュア株式会社 ビジネス コンサルティング本部 マネジング・ディレクターの木時 直様が、「日本流プロセスマイニングの進め方」について紹介しました。
アクセンチュアがグローバルで推進するプロセスマイニングと、日本で推進するプロセスマイニングにはいくつかの違いがあります。具体的には、グローバルと日本では「適用の違い」「分析アプローチの違い」「推進体制の違い」があります。
1つ目の「適用の違い」について、グローバルでは、改善ポイントが型通りであるのに対し、国内では改善ポイントが型にはまらないことが多い傾向にあります。
2つ目の「分析アプローチの違い」について、グローバルでは改善箇所の可視化、特定を中心に分析を進めるのに対し、国内ではサイロ化したプロセスに対する深掘分析を行っています。
3つ目の「推進体制の違い」について、グローバルではプロセスオーナーが改革を遂行するのに対し、日本では部門間で業務の役割分担が進んでおり、トップダウンでの改革推進が難しいケースがあります。
これを踏まえて、木時様は、日本の特性に合わせたCelonisの活用価値最大化のポイントを示します。「適用の違い」については、標準的な型にはめた「可視化」ではなく、仮説ドリブンで「データ検証」を行うこと。「分析アプローチの違い」についはクライアント、取引先に依存するボトルネックにリーチする分析を行うこと。そして「推進体制の違い」については、分析、施策立案、改革遂行まで実行できる推進体制を構築することが重要です。
日本電気株式会社(NEC) コンサルティング事業部門 戦略・デザインコンサルティング統括部 マネージャーの成田 祐樹様は、デジタルツイン技術を活用した物流プロセス変革の事例について紹介しました。
NECでは、顧客のさまざまな経営課題解決に「ビジネスモデル」「テクノロジー」「組織/人材」の3つの領域でアプローチすべく、2022年9月からCelonisと連携し、「クライアントゼロ活動」として自社事例に取り組んでいます。2023年4月からは価値創出の実現フェーズとして年額1.7億円の改善効果を挙げており、得られたノウハウをナレッジ化、コンサルサービスを展開しています。
国内の製造現場では、「デジタル技術が活用されていない」「データ精度が低い」「データの種類・量が担保されてない」という3つの要因によってデータ活用が思うように進んでいません。そこで、NECでは、デジタルツイン技術を用い、現場の「ファクト」を可視化する取り組みを実施。
ある卸売業の物流倉庫における実証実験では、荷下ろしやピッキングなど10種類もの作業を画像AIに学習させ、誰が、いつ、どんな作業をしているかを可視化しました。NECの画像解析AIの認識精度は90%を超えています。
今後は、WMS(倉庫管理システム)とCelonisをかけ合わせ、画像解析システムから収集したデータをCelonisへ投入、ベテランや中堅、新人の行動パターンを可視化して、生産性向上や教育カリキュラム充実化に活用していくということです。
次に、株式会社システムサポート(STS) 東京支社 BSX事業部 事業部長の榎本 美希様は、Celonisを自社ビジネスの改善に活用した結果や得られた知見、ノウハウについて紹介しました。
STSは、2022年3月の活用開始段階から、Celonisを「企業の成長戦略の意思決定スピードを迅速化する」プラットフォームと位置づけ、自社の案件プロセスに関わる全てのイベントをEnd-to-Endで可視化することで、案件プロセス全体の⽣産性向上に取り組みました。
また2024年3月には、新たな経費精算システムの導入と同時に稼働状況の可視化を実現しました。システムが意図した利用のされ方をされているかをチェックしたところ、導入初期にありがちな機能理解の不足による非効率などを発見したため、経費申請の承認工数の適正化を実現しました。効果が出るのはまだ先ですが、年間約380万円の売上増加につながる試算です。
Celonis CoEリーダーで同社 本社 総務部 部長の松元 善平様は、次の展開として、「健康経営の実現」を挙げます。これは、多様な個性を持った人材が有望な事業を生み続ける「社員にとってエクセレントカンパニーであること」を目指すものです。
榎本様は、「プロセスエクセレンス」実現に向け、今後はすべてのビジネスプロセスに関する情報を一元管理する「プロセスマネジメント」、プロセスの可視化、効率的・効果的な改善機会を発見する「プロセスマイニング」、発見された改善機会に対し改善・変革を実行する「プロセストランスフォーメーション」をバランスよく繰り返していくことで競争優位性を確立していきたいと話しました。
日本アイ・ビー・エム株式会社 コンサルティング事業本部 オートメーション事業部長 パートナーの西垣 智裕様は、生成AIとプロセスマイニングの関係について、次のように話します。
「IBMはCelonisとの連携を強化し、生成AIソリューション『IBM watsonx』とCelonisを組み合わせたユースケースを開発しています。これにより、構造化データと非構造化データの統合分析、AIによる自動分析・判断・アクションが可能になります」
具体的なユースケースとしては、キャッシュ・コンバージョンサイクルの最適化や、契約書と購買システムの不整合検出、マスター更新などがあります。
キャッシュ・コンバージョンサイクルの最適化では、Celonisで収集した業務データをwatsonxの運転資本最適化のためのデジタルツインが分析し、会話形式で改善策を提案します。不整合検出とマスター更新では、Celonisで購買システムのデータを分析し、watsonxで契約書を読み取り、支払条件の不整合を検出します。さらに、IBM watsonx Orchestrateでマスターデータの更新などのアクションを自動実行します。
西垣様は、生成AIとプロセスマイニングのコラボレーションは、企業のDXを加速させる上に、生産性向上や顧客体験向上に大きく貢献すると話します。そしてIBMは、Celonisとのパートナーシップを強化し、お客様の課題解決を支援するさまざまなソリューションを提供していくとしました。
富士通株式会社は、プロセスマイニングを扱うための専門知識やスキルを持つ人材を育成して資格取得を奨励、「Celonis」を効果的に管理・活用するために、CoE(Center of Excellence)という組織を設立しています。
同社 クロスインダストリーソリューション事業本部 データ戦略コンサルティング事業部 シニアマネージャー 鈴木健一様、グローバルサプライチェーン本部 サプライチェーン基盤統括部 シニアマネージャー 杉山慎太郎様、クロスインダストリーソリューション事業本部 データ戦略コンサルティング事業部 担当 木村奏様が、CoEが取り組んだ具体的な事例について語り合いました。
サポートデスク業務では、顧客からの問い合わせ対応に時間がかかり、顧客満足度が低下していました。またチケットの再割り当てが頻発し、対応効率が悪かったといいます。
そこで「Celonis」を用いた分析により、「チーム間の情報共有不足」「顧客とのコミュニケーション不足」という課題を明らかにしました。これらの課題に対して、富士通は情報共有プラットフォームの拡充と活用方法の啓蒙を始め、顧客からの情報収集プロセスの改善、チャットやWeb会議の積極的な活用といった対策を講じていきました。その結果、1件ごとのチケット再割り当て回数を平均15.4回から2.9回と大幅な削減ができ、再オープン発生率も35%から16%と低下させるなど、顧客満足度の向上につなげることができました。
CoE組織では、業務改革を進める中で、現場からの抵抗感という課題にも直面したそうです。これらの課題を克服するために、富士通は経営層への働きかけ、業務部門の巻き込み、継続的なモニタリングといった多角的なアプローチを取りました。
富士通では、Celonisの社内実践で得られた知見やノウハウを活かし、顧客の業務改革を支援するさまざまなサービスを提供しています。
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